「なるほど、事情は把握しました。……すこし時間をください。僕らのチームも、話し合いが必要なので」

 逃げるのか不安でしたら、スタンドを何体でも監視につけていただいて構いませんよ、と告げて、ジョルノくんは実に冷静に、私の話について理解を示してくれた。
 話といっても、この状況下でできた会話は、

。貴方たちが、ボスを狙う裏切り者ですか?」
「う、うん」

 ……と、たったこれだけである。しかし、それでジョルノくんにはじゅうぶんだったようだ。ジョルノくんは宣言通り背後に監視となるメローネさんのスタンドを連れて、仲間に質問攻めにあいながらも、大丈夫ですよ、任せてください、と私を安心させるように笑い、待機している仲間の元へ引き返していった。
 小一時間程度して、ジョルノくんは先ほどとは違う、黒髪の男性――確か向こうのチームのリーダーのブチャラティという人だ――を連れて、ふたりで鏡の前に戻ってきた。イルーゾォさんは警戒しつつも、再度許可を下ろす。もちろん、本体のみをだ。

「話をつけてきました。僕たちの……護衛チームの目的は同じです。協力しましょう」
「えっ……」

 私だけでなく、暗殺チームのメンバー全員も、ジョルノくんの言葉に驚愕する。おそらく予想はできていただろうその反応に、ブチャラティさんが続けた。

「俺たちも組織に……現在のボスに不満がある。俺たちはボスの居場所を暴くため、トリッシュを護送しているんだ。……できるなら、協力を頼みたい」

 願ってもない幸運な話だった。だが……私はジョルノくんを知っているからいいとして、他のメンバーは、彼らを信用する理由が無い……。むしろ、口八丁で騙してこの場を乗り切ろうとしているようにすら、見えるだろう。
 しかし、意外にも、暗殺チームが出した答えは反論でも疑惑でもなく、沈黙だった。
 みんな黙って、私を見ている。
 リゾットさんが、私に優しく訊ねた。

。お前は、どう思う。信じるのか?……申し出を受けたいのか」
「……えっと」

 昔から、自分の意見を口に出すのは苦手だった。それに反対されて、もしも喧嘩にでもなったらと思うと――私はいつも口を噤んでしまう。それならば、他人の意見に同調するほうが気楽だった。
 言い淀む私に、また、リゾットさんは優しく言う。

「俺たちは、お前が『信じる』なら……文句はひとつもない。お前が考えた末に出した結論なら、それが信頼に足るなによりの根拠になる。――だから教えてくれ、。お前は、どうしたい?」

 その言葉を聞いて、――私は初めて、自身がこの暗殺チームの一員として認められているのだと確かに実感した。こんな状況で、ひょっとしたら相手側に寝返ったようにも見えかねない――相手をかばうなんて真似をしたのに、それでも、信じてくれている。
 私を。
 私なんかを。
 仲間だと……。

「――私は、信じます。彼らと協力したいです」

 今度は淀みなく、告げられた。仲間を守るために、なりふり構わずいられる本当の覚悟ができた。
 リゾットさんが、暗殺チームの面々が、笑う。やっと私は、彼らと真に心が通じ合った気がした。もしかしたら、ずっと手は差し伸べられ続けていて、私が気づかなかった、ただそれだけなのかもしれないけれど。