トースターで焼かれた甘いパンを食べる。クロワッサンの生地に、中身はチョコレートが入っている。今日の朝食も、おいしい。甘い朝食というのにも、案外、慣れてきたのかもしれない。ただ、やはり、これからも時折懐かしくなるだろう。思い出を消すことはできない。

、グレープフルーツジュースでいいか?」

リゾットさんが冷蔵庫の中身を確認しながら言った。空のグラスを持っている。いつも朝の飲み物はオレンジジュースだが、たまに、切れているときがあり、そういうときは、ホルマジオさんがお酒を割るのに使っているジュースをすこし分けてもらう。それで大丈夫です、と私は頷いた。
窓の外を見ると、空を雲が覆い始めていた。予想よりも早く降るかもしれないし、いつ止むかも分からないもので、アジトを出るときは、傘をもっていく必要があるだろう。ことん、と音がした。リゾットさんが、グレープフルーツジュースを注いだグラスを、置いてくれた音だった。
リゾットさんはそれを終えると、私の隣に座り、私が食べるのをじっと眺めている。何が面白いのかは理解できないけれど、リゾットさんはよく、こうして、私を観察するように見ていることがある。きまって優しげな顔つきをしているから、たぶん、面白いのだろう。
パンを食べ終え、グラスに残ったジュースを飲みほしてから、立ち上がる。あくびが出た。いまさら、眠気がやってきたみたいだ。早起きをしたのだから、しかたない。
私は軽く眠気を取ろうと伸びをしてみた。しかし、それで多少改善されるどころか、なんだかよけい、眠くなる。食後とはいえ、異常に眠い。思わずふらついて、リゾットさんに支えられた。大丈夫か、という声が遠い。

「いえ、すみません、ちょっと眠くて」
「寝足りないなら、寝たほうがいい」
「プロシュートさんとの待ち合わせがあるんです」
「十分だけなら大丈夫だろう。軽く眠って、眠気を取れ……俺が起こしてやる」

この猛烈な眠気においては、かなり甘い誘惑だった。十分だけ。十分だけなら確かに……どうせ遅刻なのだし変わらないか。それくらいは、待ってもらおう。
私は誘惑に負け、リゾットさんに支えられるまま、リビングのソファーまで行って、倒れこんだ。いや、倒れこみそうなところで、リゾットさんが抱き上げ、優しく横たえてくれた。それから、何を思ったか、リゾットさんは私を膝枕する。ちょうど枕は欲しかったが、リゾットさんの太腿は、かたい。
寝心地は悪くとも、眠気には抗えなかった。
…………。
私は眠りの世界に落ちていった。