私の不思議な友人について、お話ししましょう。
彼はヴィネガー・ドッピオという名で、こう見えてパッショーネファミリーの参謀を務めるすごい人です。私は彼をドッピオくんと呼んでいます。ドッピオくんはおかしなところもありますが(たまに架空の人と電話をし始めるのです)、優しくて、残酷で、とても面白い友人です。ある日、彼は私にラブ・レターを渡しながら、ここに書いてあるのは僕の真実の気持ちだけれど、僕は、この気持ちをきみに直接伝えたら殺されてしまう、そう言って泣きました。
ラブ・レターは、彼らしい、丁寧で、ちょっと不慣れで、けれども素敵なものでした。そこには、パッショーネのボスが、私のことをご執心なのだ、とも、書かれていました。それが果たして彼の空想なのか知りませんが、彼のなかでは真実となっているのに間違いありません。私たちはお友達でいることになりました。
しかし、それからというもの、ドッピオくんから、奇妙な頼みごとをされるようになったのです。
ええと、なんていうのですか。ベルトと、張り型のついているアダルトグッズ。あれで、ドッピオくんは、私に尻を犯してほしいと言うのです。これは彼の上司であるボスからの指令で、ドッピオくん自身も、どうしてこんなことをしなければならないのか、まったく見当がつかないようすでした。ただ、彼自身にそんな趣味が無いのは明白で、ぶるぶる震えながら、壁に手をついて、ゆるく足を広げて、私に尻を差し出しました。
私も勝手が分かりませんから、かなり無理をしたと思います。なんとかローションを使って、ドッピオくんを貫きました。ドッピオくんは童貞らしく、きみとの素敵な初めてを夢見ていたのに、と独り言をぶつぶつ呟いては、この現状にひどく泣くのです。勃起だってしていません。本当に、なんでこんなことをしているのかしら。無心で行為を続けていると、ふと、一瞬、ドッピオくんの姿が二重にぶれました。
「あっ、あっ、ッ、愛してるッ」
気持ち良さそうに告げたその声、信じてもらえないでしょうが、いつものドッピオくんの声と、まったく、違ったのです。低い、大人の男の声。私はドッピオくんを犯していたはずなのに、なぜか、背丈の高いピンク髪の男を犯していた。と、思ったのも刹那、やはり気のせいだったのか、犯しているのは泣いているドッピオくんでした。苦しげに呻きながら、張り型を受け入れるドッピオくん。喜んでいるはずがありません。けれど、たまに、嬉しそうな喘ぎを上げて、体を揺らすのです。まったく、別人の声で。
「あああああ……っ!」
結局、ドッピオくんはいやいや達しました。精液が床に落ちて、荒く息を吐いて、静かに泣いています。私はあまりに彼が可哀想になり、
「また、あの素敵な、ラブ・レターを書いてよ」
と励ましました。ドッピオくんは今度は大泣きして、私に伝えます。
「ダメだ、あれもボスにばれてしまった。僕らは一生結ばれない。ごめん、ごめんよ」
私もドッピオくんが大好きで、彼も大好きで、愛し合っているのに。私たちはまるで、ロミオとジュリエットです。それから、定期的に、ボスの命令を受けたドッピオくんを犯すようになりました。張り型はどんどん大きく、凶悪になっていって、最中のドッピオくんは号泣し悲鳴をあげます。けれどもやはり、たまに姿が二重にぶれて、雄叫びみたいな、気持ち良さそうな低い喘ぎと、私への愛の言葉をこぼすのです。ドッピオくん。私の愛する友人。では、あなたは誰?
私がドッピオくんと、正しく愛し合う日は来ないでしょう。もしかすると、ドッピオくんは何かに取り憑かれているのかも。だとしても、私にはどうしようもないのです。不思議な友人として、私は、彼と付き合ってゆかねばならない。悲しい。それでも、時折見せるドッピオくんのぶれは、とても幸福そうなのが、せめてもの救いなのです。