上書きしてくれと言うプロシュートさんの気持ちは私には分からない。強姦をされた経験でもないと、とうてい理解はできないのだろう。ましてや男と女だ。冷蔵庫のズッキーニはよく冷えていたので手で温めた。私たちは寝室のベッドの上に居る。私も裸で、プロシュートさんも裸だった。ましになった、とはいえ、プロシュートさんの裸は痛々しい。
「恋人とするみたいに、優しくしてくれ」
掠れて上擦った声は、甘えているのだ、と分かった。私は勝手も知らないため、とりあえず、彼の胸板に手を滑らせる。あんなひどいめにあったのだ。私にできることなら、してあげたい。慰めにすら、ならないかもしれないけれど。
引き締まった胸板から腹までを撫でさすりつつ、私はプロシュートさんの首筋に吸い付く。赤い跡をつけては舌で優しく舐め、また、赤い跡をつけるのを繰り返す。プロシュートさんの肌が暖かく汗ばんできた。吐息が甘い。耳に舌を入れてやると、ああっ、と、信じられないような高い声を発した。そのまま耳を犯していると、下腹部に、熱く硬いものが当たる感覚がする。
「プロシュートさん、気持ちいいですか?」
体を離して訊ねると、潤んだ瞳でプロシュートさんは私を見上げ、返事のかわりに首に腕を回し、唇に吸い付いた。苦しくないように気をつけながら、舌を絡める。恋人とする、というのは、こんなかんじでいいのだろうか。親愛という意味でしか人を愛したことがないので、よく分からない。
かなり長い時間、唾液を混ぜ合っていたと思う。そろそろ苦しいだろうと口を離すと、互いの間に銀色の糸が引いた。プロシュートさんは、頬を赤らめ、眉を下げてたいへんだらしない顔をされている。
「、好きだ」
好き、好き、愛してる、とプロシュートさんが呟くので、私も、同じように、
「好きです、愛してます。プロシュートさん」
と、心にもないことを言う。言いながら、プロシュートさんの陰茎に手を伸ばし、ゆっくりと、撫でさする。既にすっかり先走りで濡れているそこは、刺激を待ち望んでいたとばかりにびくりと振動した。
「あ、あッ、嬉しいッ、嬉しいぜ……、お前も、俺が好きなんだな……ッ、……俺も、あ、愛してるっ」
「ええ、私も愛してます。両想いですね」
プロシュートさんはひときわ高く鳴いた。目尻から涙がこぼれていたが、痛いせいではないだろう。手もほどよく濡れてきたので、ズッキーニに潤滑油がわりにそれを塗って、プロシュートさんの肛門にあてがった。こうしてみると、やや太すぎる気がする。ただ、おそらく一度以上広げられた穴なのだから、受け入れるのは難しくないはずだ。私は慣らさずにそのまま挿入した。ああああっ、と、プロシュートさんは体を弓なりにする。排出する場所に入れられるのは、内臓を押し上げられるような苦痛と聞いたことがあるが、どうなのだろう。少なくともプロシュートさんの陰茎は猛ったままだし、目を見開いているものの、彼の口角は悦びに綻んでいた。ゆっくりと押し進め、限界のあたりで、また、それをゆっくりと引っ張る。出し入れを繰り返すと、プロシュートさんは笑ってしまいそうなほど情けない声で、何度も喘いだ。
「ずっと一緒に居てくれ、俺だけを愛すると誓ってくれ……ッ、あ、あ、ああああッ!」
「はい。愛してますよ。プロシュートさん。私には、貴方だけです」
その私の言葉とともに、プロシュートさんは感極まった叫びを上げて、最奥を突かれ、女のように達した。筋肉質な体が歓喜に震え、精液を吐き出し、ぐったりとベッドに体を投げ出す。プロシュートさんは、幸せそうな顔をしている。
ああよかった、立ち直ってくれたかもしれない。こんな私でも力になれたなら、本当に、よかった。
プロシュートさんが、、と、小さく私の名を呼ぶ。どうしましたか、と訊ねると、腕を引かれ、同じくベッドに横たえられた。まだ、恋人ごっこはしたほうがいいのだろうか?プロシュートさんは、照れ笑いのような表情をつくり、また、愛している、と言って、私を抱きしめた。