俺はどうしようもないゴミでクズだ。ニートで社会のはぐれ者で友達も居ない引きこもりのクズ。燃えないゴミ。そんな俺が好きになってしまったのは、高嶺の花にもほどがある、女神のようなひとだった。名前はさん。彼女は有名大学を卒業して新卒で大企業に就職し、俺よりも年下なのに俺の父さんより偉い役職に就いている。いつも笑顔を絶やさず分け隔てなく人に優しくして、給料のほとんどは寄付に使い、自分は最低限のお金だけで、質素な暮らしをしているのだ。休日も休まずボランティア活動。俺は、彼女のように心の綺麗なひとを見たことがない。
彼女との出会いは、赤塚町の駅前だった。安売りをしていた猫缶を大量に買った俺は、満足してろくに前も見ずに歩き、盛大にすっころんだ。両手に持っていた膨らんだビニール袋は破れ、ガラガラと猫缶が散らばる。周囲の人間は見てみぬフリ。俺は近くに落ちた猫缶をふたつみっつ拾って両手がいっぱいになり、かといって入れていたビニール袋も破れているしで、どうすることもできずおろおろしていた。そんな馬鹿みたいな俺に、大丈夫ですか、って、声をかけてくれたのが、彼女。
初めは恥ずかしいのだけれど、彼女の美貌にくらりとするほど面食らった。この世にこんなに美しい人間が居ていいのか、そう思ってしまうほどだった。彼女は呆然としている俺の手にある猫缶と散らばった猫缶を見て、手伝いますよ、と言って、手早く猫缶を積み上げて、自分の鞄から折りたたみのエコバックを出した。そしてエコバックに猫缶をすべて入れて、どうぞ、と、俺に差し出してくれたのだ。
「あ、あの、あ、ありがとうございます」
「どういたしまして」
まったく嫌味なく笑って、彼女は俺に背を向けて、行ってしまう。俺はしばらく夢心地にぼんやりしたあと、慌てて小さくなっている彼女の背を追った。彼女は買出しかなにかをしていたのか、一度会社らしきビルに戻って、夕方五時ごろに同じ出入り口から出てくる。俺はそのまま、彼女の後をつけ、彼女の家を知った。その日はそのまま家に帰って、トイレに借りたエコバックを持ち込んで抜いた。精子はエコバックの中に残さず流し込んだ。猿みたいに抜いたあと、エコバックを隠して寝室に向かうと、軽蔑した眼差しの兄弟たちが、声おさえろよ、と苦情をつけた。
翌日、真っ昼間に彼女のアパートに行って精液で濡れたエコバックをドアノブに掛けておいた。彼女は俺のことを覚えているだろうか。ついでに彼女の郵便受けを漁りダイレクトメールから名前を知ったのはこのときだ。俺はあとで彼女について調べることを決め、少し離れたビルの影に隠れて彼女が帰宅するまで待った。夕方、彼女の姿が見える。こんなに離れていても分かるほど美しい。彼女は自分の部屋に入ろうとして、ドアノブに掛かっているエコバックに気がつくと、それを手に取り中身を見た。周囲を見回し、エコバックを持ったまま部屋に入る。俺の股間は痛いくらいに勃起していた。